前回大会『オーバーウォッチワールドカップ2023』では、強豪フランスを破りながらもサウジアラビアとアメリカに敗れ、あと一歩のところでベスト8進出を逃した日本代表。

あれから3年。2026年大会で2度目の日の丸を背負いキャプテンを務めるNicoをはじめ、Qki、Rrmy、KSG、epic、FiNN、Ydotの7名にインタビューを実施した。

プロへの道を歩み始めたきっかけ、日本代表として戦う覚悟、
そして長年立ちはだかる”ベスト8の壁”を打ち破る準備はできているのか。
世界への挑戦を前にした彼らの胸の内に迫る。

Photo Sasuke Aoyama, mizuiro, GANYMEDE / Text Shuji Oshima / Edit mizuiro

ゲームに囲まれた少年時代
そして『オーバーウォッチ』との出会い

━━現在、日本のトップシーンで活躍されているNico選手ですが、ゲームを始めたのはいつ頃だったのでしょうか?
幼少期に親に買ってもらったNINTENDO 64から、ゲームをプレイし始めました。『スーパーマリオ 64』や、『スターフォックス 64』をよくやっていましたね。そこから、中高生になったタイミングで、父親と兄の影響で自作PCを組むようになって、FPSに出会いました。

━━ご家族の影響でPCを始めたんですね。そこから、どのようにして『オーバーウォッチ』と出会ったんでしょうか?
元々Blizzardのゲーム『ハースストーン』というオンラインカードゲームをプレイしていたんです。その『ハースストーン』プレイヤーの友人から、「『オーバーウォッチ』っていうゲームがでるらしい」と言われ、『オーバーウォッチ』をプレイし始めました。

一度は退いたプロの道
胸に残り続けた熱意と、覚悟の復帰

━━『オーバーウォッチ』と出会ってから、プロゲーマーになろうと意識したタイミングはいつでしょうか?
『オーバーウォッチ』をプレイし始めて、1,2週間経った頃でした。「このゲームめっちゃ面白いぞ。これ俺プロになれんじゃね?」と思ったんですよね。それからは、プロ志望でめちゃめちゃゲームをプレイして、アマチュアチームを渡り歩いて、ランクも今でいうチャンピオンくらいまで上げました。

━━プレイして1,2週間でプロを意識していたとは驚きです。プロゲーマーになってから、Nico選手のチーム遍歴について教えてください。
始めは、友人に「プロのトライアウトを受けてみないか」と声をかけてもらったのがきっかけで、Naturals Hokkaidoというプロチームに所属しました。そこで活動を続けていく中で、いろんな方に自分のことを知っていただけるようになったんです。そのタイミングで、CYCLOPS athlete gamingがフレックスDPSを募集していて、僕が日本で一番レートが高いこともあり、トライアウトを受ける機会をいただいて、所属することになりました。

──当時は学生だったかと思います。プロゲーマーとして活動することについてのご家族の反応はいかがでしたか?
やっぱり当時はお金の問題や将来的な不安もあったのと、eスポーツが出始めた時期だったので、正直親の了承は得られませんでした。それでも、この道で生きたいというのは、ずっと親に伝えていましたね。今となっては、時代の変化やeスポーツ業界の成長もあって、「応援してるよ」とか「世界大会見てるよ」とか言ってもらえるようになりました。親に認めてもらえるというのは、嬉しいことでもありながら、プレッシャーでもありますね。

──CYCLOPS athlete gaming脱退後は、一度就職されたとお聞きしました。
そうですね。当時は学生だったのもあり、プロゲーマーを続けていく覚悟が決まらなくて、学校を卒業した後は就職して働いていました。でも、自分の心の中に、この先もプロゲーマーを続けたいという気持ちがあったので、ずっともやもやしながら暮らしていたんです。そしたら、『オーバーウォッチ2』が出ることになったので、そのタイミングで復帰しようと決意し、『オーバーウォッチ』を愛し続けることができるメンバーを集めました。復帰した当初は、到底食べていけないお給料だったので、今後は『オーバーウォッチ』だけで生活していきたいという一心で、動画投稿や配信をここ3年間ほど必死に頑張って続けています。

──日本のトップを走りながらも動画投稿や配信を欠かさない姿勢から、プロへの強い熱量が伝わってきます。では、プロゲーマーに復帰してからの活動について教えてください。
復帰してからは、とにかく経験を積み、自分たちの実力を見せるためにパシフィックやオーストラリアなど、様々なリージョンの大会に出場していました。プロゲーマーとして活動していくからには、他の人に見てもらわないといけないし、今後の『オーバーウォッチ』シーンのためにも、何かしら実績を残して伝えていかないと、新しい若い選手も生まれて来ないので、とにかくアピールできることは全てやってきましたね。

憧れの世界の舞台へ
初の“日の丸”を背負った戦い

──『オーバーウォッチ』シーンの未来のことも考えながら、活動を続けてこられているんですね。ここからは、『オーバーウォッチワールドカップ(以下、OWWC)』についてお聞きします。『OWWC 2023』で初めて日本代表に選出された時の心境を教えてください。
本当に嬉しかったことを今でも覚えていますし、やっと『OWWC』が帰ってきたという気持ちもありました。そのタイミングで、自分が日本代表に選ばれたっていうのが嬉しくて、自分にとって『OWWC』は本当に大事な存在になっています。

──『OWWC 2023』では、フランスに勝利したものの、惜しくもグループステージで敗退という結果(ベスト12)でした。この結果を、当時はどのようにして受け止めましたか?
ベスト8に入って『BlizzCon 2023』で試合をすることが最大の目標でしたが、結果としては目標は達成できず、自分たちの中でも満足はできませんでした。けど、自分たちの全力は出し切って、応援してくれている皆さんに見せれるものは見せれたと思っているので、あの頃は本当によく頑張ったなと思っています。あと、2023年『Overwatch Contenders 2023 Asia Pacific』や『Overwatch League(以下、OWL)2023 – Spring / Summer Stage Opens』(※1)などのアジア大会で韓国チームに勝利できず、その先の世界大会に進むことができていませんでした。そのため、日本が世界で見た時に、どの位置に居るのかがわからなかったんです。でも、『OWWC 2023』を通して、世界のプレイヤーの実力や日本の位置を直接感じることができたので、その点は凄く良かったですね。

(※1)
『OWL 2023 – Spring / Summer Stage Opens』
プロリーグ『OWL』が2023年に実施したオープン予選。それまで固定のプロチームしか出場できなかったリーグの門戸が開かれ、これを勝ち抜いたアマチュア等のチームがプロリーグのチームに挑戦する権利を得られた。

あの日の悔しさを糧に
リベンジに燃える世界への再挑戦

──今回、2度目の日本代表に選ばれた時の率直な気持ちについて教えてください。
「俺がやるしかねぇ」って感じましたね(笑)。選んでいただいたからには、日本を背負って頑張りたいと思っています。『OWWC 2023』では、とにかく練習し続けてがむしゃらに勝ちに行くぞという感じでしたが、今回は、今までの経験をどのように活かして、どんな対策をしたら良いかというのをしっかりと考えながら練習をし、本番に望みたいと思っています。

──『OWWC 2026』日本代表のメンバーは複数のチームから選出されています。「抜かりないチーム」と個人配信でおっしゃっていましたが、どのような部分からそのように感じましたか?
日本トップレベルの実績を持っており、パフォーマンスも非常に高いメンバーが集まっているところですかね。あと、今回はFiNNさんが日本代表に来てくれていて、今までの経験から得た知識をたくさん共有してもらえる所も、今の日本代表の良い所だと思っています。

──普段戦っているライバルが、今回は同じチームの仲間として、『OWWC 2026』に出場されます。一緒にプレイしたからこそ、気づく仲間のすごさは何かありますか?
『OWL』の上位で活躍してきたFiNNさんの知識量や細かいコールは凄いなと感じています。今、FiNNさんはEMEAで活動していることもあって、アジアに無い戦い方を教えていただいています。あと、若いプレイヤーなので、メタの変化についていくのが早かったり、自分では思いつかないような新しい発想を伝えてくれたりするので、そういった若い意見もどんどん取り入れて、頑張っていきたいと思っています。

──他地域ならではの知識や戦略を得ることで、日本代表もより強く成長していくように感じます。今年の日本代表の中で、Nico選手の注目メンバーはどなたでしょうか?
KSGですね。元々強いことは皆さん知っていると思うんですけど、ここ1年の成長率が本当に凄まじいと思っています。VARRELの中で、TOPDRAGONさんやSleyさんに教えてもらっている時も、吸収が早い選手だと感じているので、本当に『OWWC 2026』での活躍も楽しみな選手ですね。

2度目の“日の丸”を背負い、
ベスト8の壁へ挑む

──2023年の時は、日本の『オーバーウォッチ』シーンの火付け役になりたいとおっしゃっていました。今年は日本代表の活動を通して、どのような事を成し遂げたいと思っていますか?
“成り”たいですね(※2)。将棋でいう駒をひっくり返すようなイメージです。2023年の時は「将棋の駒を作りたい」という気持ちでした。今年はその作った駒を進めて、相手を倒して“成る”事ができたら良いなと思っています。

(※2)成る:将棋における「成る」とは、敵陣に入ることで駒を裏返し、より強力な駒になることを指す。

──今まさに火が付いている状態だと感じています。『OWWC 2026』を勝ち進み、“成る”ためにも、Nico選手が警戒している国はどこでしょうか?
韓国、サウジアラビア、アメリカの3カ国ですね。韓国は、ミスがなく、構成の有利不利をしっかりと突いてくる印象があります。本当に『オーバーウォッチ』が上手いチームですね。
サウジアラビアは、ルシオ・キリコ構成のような、早いテンポの構成が得意で、ULT回しやミクロの部分で勝っていくチームだと思っています。
アメリカは、選手層も厚いですし、開催国がアメリカというのもあって、現地のファンがたくさん応援しに来ると思っています。そういった開催国のパワーって本当に侮れないと思っていて。その影響でより強くなることがあると思っているので、警戒している国の一つですね。
今年は、「良い勝負ができたら良いな」といったチャレンジャーではなく、絶対に倒す気持ちで勝負したいと思っています。

──最後に、応援してくれているファンの方へメッセージをお願いします。
いつも応援ありがとうございます。2023年は、めちゃめちゃ努力して頑張ったんですけど、ベスト12という惜しい結果になってしまいました。この3年間、ずっと『オーバーウォッチ』をプレイし続けて、経験をたくさん積んで、この舞台に帰ってくることができました。ベスト8はもうマスト。『BlizzCon 2026』で、試合をしている姿を皆さんにお見せしたいと思っているので、この先も応援よろしくお願いします。

【プロフィール】
1999年2月3日生まれ 滋賀県出身
VARREL所属。日本代表のキャプテンを務めるダメージプレイヤー。VARRELのリーダーとして、何度も“日本一”に輝いた実績を持つ。好きなヒーローはフレイヤ。彼のアグレッシブなプレイスタイルから生まれる「ニコニコカーニバル」が世界の舞台で炸裂するか、期待が高まる。

【関連リンク】
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