無茶振りから始まった
大御所が語る“キャスター”という仕事

初めは映画監督を目指し、上京してきたOooDa。
東京で挫折を経験し、止まってしまった人生がゲームによって再び動かされた。
プロゲーマーの姿に魅了され、足を踏み入れたeスポーツの世界。
そこで出会った“キャスター”という仕事。
彼は一体どのようにしてeスポーツキャスターの最前線を走ることになったのか。

Photo Masumi “mizuiro” Fukuda / Text Shuji Oshima / Edit Rio “Chaba” Takeno

※本文は2025年11月21日に発行したGAMEZINE Vol.33に掲載されたインタビューです。eスポーツマガジン「GAMEZINE Vol.33」の購入はこちら

“夢”を追いかけ、上京
挫折を経て出会ったPCゲーム

――はじめに、OooDaさんのゲームとの出会いについて教えてください。
母親がゲーム好きだったこともあり、ゲームボーイやファミリーコンピュータ、NINTENDO 64が家にありました。それを借りて『ポケットモンスターシリーズ』をプレイしていましたね。あとは、誰かと対戦したり、協力したりするゲームが好きだったので、友達と『マリオカート』や『ドラゴンボールZ 超武闘伝』をよくプレイしていました。欲しいってお願いしたゲームは買ってもらっていた記憶があります。高校生の頃は、ゲームセンターにハマってたので『ミスタードリラー』や『メタルスラッグ』、『鉄拳』などをプレイしていましたね。

――PCのオンラインゲームにのめり込んだきっかけや経緯は何でしょうか?
初めは、映画監督や映像ディレクターを目指すために上京したんです。自主製作の映画も作ってみたかったので、バイトをしながら制作に励んでました。やっとの思いで完成した作品を観たら、もうくそつまんなくて。全く自分の思い通りにならなかったことにめっちゃショックを受けて、東京でがっつり引き籠るようになっちゃったんですよね。そんな中、東京で知り合った超オタクの友達に「PCでゲームしてるんだよね」って言われて、教えてもらったのが無料のFPSゲームの『ぺーパーマン』でした。当時はPCでゲームをするという事が衝撃でした。そこからPCのオンラインゲームにどっぷりハマりましたね。

――今ほどPCでゲームをすることが当たり前の時代ではなかったですよね。
そうですね。PCは音楽を聴いたり動画を観たり、映像編集したりするためのものという認識だったので、そんなPCでゲームをして、しかもボイスチャットで全国の老若男女問わずの人と会話しながら一緒にプレイすることができて「すげぇ……」って感じたのを今でも忘れられないですね。最初はボイスチャットで話している相手はみんな同じ家に集まってパーティでもしているのかと思っていました(笑)。

PCのオンラインゲームに魅了され
eスポーツの世界へ

――PCのオンラインゲームに出会ってから、どのようにしてeスポーツの世界に関わるようになったのでしょうか?
『ペーパーマン』の後に『カウンターストライク1.6(以下、『CS 1.6』)』にハマっちゃって、『CS 1.6』の海外大会を観るようになったんですね。そこから日本でnoppoさんやKeNNyさんの世代がプロとして活躍しているのを観るようになり、「ゲームで本気で取り組んで、こんなかっこいい世界があるんだ」と衝撃を受け、「僕もどこまで行けるか試したい」「みんなと大会に出てみたい」と思い、カジュアルと本気の間くらいの真剣度でゲームをプレイするようになりました。

――最初は、プレイヤーとしてeスポーツの世界に関わり始めたんですね。
そうですね。ゲームに取り組み続ける中で、裏方としてeスポーツに関わるようになったのは、国内唯一の『CS 1.6』のコミュニティ大会『Survival of the fittest』のボランティア募集を見かけて、応募したのが裏方に入った始まりでした。その大会の運営のトップの人から「お前話してて面白いから、大会の配信でちょっと喋ってみてよ」って急に言われて、それから大会で喋るようになりましたね。気づいたら働きながら毎週土日は大会の実況を家でするようになっていて、どんどん実況にのめり込んでいきました。

――無茶振りから始まったことだったんですね。
そうです。あと、当時国内で流行っていた他の無料ゲームに負けたくなくて。『CS 1.6』はこんなにも面白いのに「なんでみんなやらないんだ」という思いがあったので、その面白さをもっと色んな人に伝えたい一心で続けていました。

――当時はまだボランティアで実況をされていたんですよね?
当時はただただ好きでお金は貰わずにやっていましたね。平日はコミュニケーション能力を上げつつ、PCの知識を付けたいと思い、PCショップで働きながら、週末は趣味としてライブ配信上でキャスター業をしていました。

“好きな事”が仕事に
プロのeスポーツキャスターへ

――そこから、eスポーツキャスターがお仕事になったタイミングはいつだったのでしょうか?
『カウンターストライクオンライン』の大会『カウンターストライクオンライン Japan Championship 2011 Final』で実況したのが初めてのキャスターとしての仕事でした。この大会の関係者の方が「『CS 1.6』でずっとコミュニティを支えているOooDaってやつがいるんですよ」って僕のことを大会の制作会社さんに推してくれたのがきっかけで、実況させてもらうことになりました。

――『CS1.6』で実況を続けていたことがお仕事に繋がったんですね。現在は具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
仕事の9割が、キャスター業とストリーマーさんを絡めたゲーム関連の番組のMCになります。競艇や競輪のイベントのMCの仕事もありますが、ストリーマーさんが参加されているものなので、やっぱり何かしらゲームに絡んでいる仕事が多いのかな。始めた当初は、1年に2, 3本しかなかったのが、今は月20本以上仕事をいただいていて、年間260本程こなしています。週5くらいのペースですね。

――年間260本ですか…!かなりの数のお仕事をこなされている中で、一番印象に残っている大会・イベントは何でしょうか?
めちゃくちゃいっぱいあるんですけど、特に印象に残っているのは、2022年に横浜アリーナで開催された『Riot Games ONE』ですかね。イベントの最後に『VALORANT Masters Tokyo 2023』開催決定のサプライズムービーが流れたときは、会場もドカーンって揺れるぐらいお客さんが沸いて。eスポーツにのめり込んだきっかけが海外大会を見たことだったので、国際大会が日本に来ると発表されたあの瞬間はもう感情を抑えきれなくて泣いちゃいましたね。割と普段から選手のインタビューを聞いたり、実況しながら涙してしまうことがあるんですけど、全力で拭いて我慢して耐えて、カメラが戻ってきたら普段通りやるようにしていたんです。でも、さすがにあの時はオフラインというのもあり、隠せずにステージ上で号泣しちゃいましたね。

――そういった熱い感情が、OooDaさんの実況スタイルの魅力にも繋がっているように感じます。どのようにして、そのスタイルを確立されていったのでしょうか?
結構右往左往してましたね。初めは楽しく実況していて、段々とかっこよく実況したいなと感じるようになったんです。僕自身MCバトルとかヒップホップが好きで、ある時、ものすごい熱量で訴えかけてくるラッパーを見つけたんですよ。その人を見てから、人を感動させるためには熱量が重要そうだなと思って、面白さや盛り上がりを伝えるために、今のスタイルになったのかなと思います。

――ラッパーから影響を受けていたとは驚きです。OooDaさんが実況をする上で意識していることは何でしょうか?
1番は「観てる人にどう感じてもらえるか」ですね。喜んでもらう、怒ってもらう、笑ってもらう、感動してもらうなど、観てる人から反応が貰えるように自分自身が納得できるところまで仕上げています。その上で、失敗したり、「上手くいったな」と思ってもお客さんの反応はいまいちな時とかいっぱいあるんですけどね。お客さんが何かを感じてくれることは、やりがいにも繋がっています。

――「何かを感じてもらえる実況」をするために、具体的にどんなことを行っていますか?
ゲームや選手、演者さんについて、自分で調べた情報をまとめた資料を印刷して持っていくようにしています。どういう情報を伝えたらみんな嬉しいのかな、これは知っておくべきだな、とか考えているうちに、こういった資料はあった方が良いなと思い、始めました。番組のMCをする時は、ゲームのことはもちろん、演者さんがどんな人なのかなって調べていますね。大会の実況をする時は、出場する選手について、今どういう立ち位置なのか、どんな活躍をしているのか、など調べて臨んでいます。足りない部分は資料に手書きで付け加えつつ、使っています。自分の記憶力に自信ないので毎回これがないと不安になっちゃいますね。今はお守りみたいになっています。

未来のキャスターへ
最前線から伝える“リアル”

――eスポーツキャスターを続けていく上で、厳しい、大変だ、と感じるところはどんな部分だと思いますか?
全部ですね。実況するときは生放送なので、その時の雰囲気に合ったことをしないといけないし、言葉選びも気を付けないといけません。時には間違うことだってあります。だからこそ、常に悩みながら進まないといけないところは厳しいところかもなと。直接お客さんの反応を受け取れる世の中でもあるので、プレッシャーみたいなのは常に感じながら仕事していますね。厳しい世界だと思いますよ。本当に好きじゃないと無理だと思います。それでも、頑張ってもがいてチャンスを掴んでいる若い子たちも耳にするので、チャンスがないわけではないと思いますけどね。

――eスポーツキャスターを目指している方が、今するべきことはなんでしょうか?
とにかくコミュニティ大会とかで「実況させてください」って声かけることですかね。知名度がない時はガンガンいろんな番組に出てみたり、SNSで発信をしたり、小さい大会のウォチパをお願いして配信でしゃべってみたりと経験を積むことが重要かなと思います。あとは、動画を観て実況を当ててみたりとか、自分の行動や町の様子を「今黄色い車が時速20キロで走っており、赤信号で止まりました」みたいに心の中で実況してみたりとかも良い練習になるかなと思います。

――地道な練習や経験を積むことがまず大切なんですね。その他に、意識するべきことはありますか?
いろんな人と出会える環境に自分の身を置くことも大事かなと思いますね。僕はその環境がeスポーツイベント制作会社だったんですけど、そういった環境でキャスター、ストリーマーなどたくさんの人に出会えると、大会・イベントで喋れるきっかけを掴めるかもしれないですね。どこから何が生まれるか、なんて世の中には無限に散らばっていると思うので。どうやったら仕事になるのかというのを自分で考えて、自分で可能性を生み出していける、そんな人が残っていくんじゃないかな。

――自分からそういった環境に身を置くこともチャンスをつかむために必要なことですね。
大事ですね。それでいうと、僕の荷物持ちをしてくれる人を探しています(笑)。荷物持ちになったらいろんな現場を見て回れると思いますよ。本当に何からチャンスが生まれるかわかんないので、運転してくれて僕のカバンを常に持ってくれる人がいればぜひ(笑)。まぁ、さすがに荷物持ちの募集は冗談なんですけど(笑)。でも、そのくらいの気持ちで、飛び込む覚悟は必要かなと思います。

――最後に、eスポーツキャスターを目指す方に向けて、伝えておきたいことはありますか?
やめておけ、ですね。それでもやりたい人って止めてもやるとは思っていますけど……。僕は仕事が年1回になったとしても、キャスター業をやめるつもりはなくて、他で働きながらでも上手いこと続けていくつもりです。でも、今最前線を走っている僕からすると本当にやめといた方が良いです。僕自身も来年どうなっているかわからないし、大変な職業ですよ本当に。

――「やめておけ」という言葉は、最前線を走るOooDaさんだからこそ、重みのある言葉になると思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。OooDaさんのますますのご活躍を楽しみにしております。

【プロフィール】

OooDa
大御所eスポーツキャスター。年間260本以上の仕事をこなし、感情を込めた実況スタイルは、多くの視聴者の心を掴む。なお、『VALORANT』ではネオンを好んで使うが、マネージャー曰く「よく味方にスキルが飛んでくる」らしい。

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