一歩ずつ着実に強くなる
挑戦の軌跡

『VALORANT Challengers Japan』で2度の優勝を果たしたプロゲーマーCLZ。
圧倒的な技術と判断力で日本中を魅了し、その姿は多くの人の目を惹き付けた。
現在はZETA DIVISIONに所属。世界の大舞台『VALORANT Champions Tour 2025』に立ち、韓国で共同生活を送りながら実力を磨いている。
新たな姿でチームを牽引する司令塔CLZの、積み重ねてきた時間と今、見据えるその先について話を聞いた。

Photo Kanta Nakajima / Text Naoto Okumura / Edit Yui Takahashi

※本文は2025年7月22日に発行したGAMEZINE Vol.32に掲載されたインタビューです。eスポーツマガジン「GAMEZINE Vol.32」の購入はこちら

幼少からのゲーム愛を胸に
スカウト、移籍、再編という転機

――CLZ選手のゲームとの出会いを教えてください。
父がかなりのゲーム好きで、家族ぐるみで格闘ゲームなどを一緒にプレイしていたのが最初です。その影響で、小学生の頃からゲームが大好きな性格になりました。小学校3年生の頃には、すでに格闘ゲームをプレイしていたと思います。

――幼少期からゲームに触れていたんですね。『VALORANT』でプロ選手としての活動を始めたきっかけは何ですか?
『VALORANT』でコンペティティブをプレイしていたら、プロゲーミングチームのDETONATORから声をかけていただいたことがきっかけです。常に上位のランク帯でプレイを続けていたことが、スカウトに繋がった要因の一つかもしれません。その後FENNELに移籍して数年間活動した後、ZETA DIVISIONから誘っていただき加入しました。

――3年半以上に渡って所属することとなった、FENNELに加入した経緯について聞かせてください。
2020年から2021年頃にDETONATORで活動していた時、FENNELの方からお声がけいただきました。当時FENNELは、まだ『VALORANT』部門が設立されておらず、荒野行動で有名なチームという認識でした。立ち上げメンバーとしてTonboさん(現MURASH GAMING所属) から「一緒にやらないか」と声をかけてもらい、Tonboさんと仲が良かったこともあって、FENNELに加入することを決意しました。

――FENNELでの選手活動の中で、2023年シーズンには大きくチームの編成が変わり、コーチの方とCLZ選手のみがチームに残る状況となりました。
当時、スタッフの方やマネージャーの方から熱い思いを聞いて、自分も共に頑張りたいと思い、残留を決意したんです。そして、SyouTaやXdllらを誘い、新たにチームを再編することになりました。

――新チームでリーダーという責任ある立場を任された当時、CLZ選手はまだ20歳でしたよね。
確かにめっちゃ若かったですね(笑)。リーダーといっても、周りの選手と一緒に誰とプレイしていくかを決めたり、チームの方向性について意見を述べたりする程度でしたので、リーダーとしてのプレッシャーが特に大きいわけではなかったです。
ただ、チームの方向性や練習内容などについては、コーチとずっと話し合い、意見をすり合わせながら進めていたことは、リーダーとして大きな仕事だったと思います。

若きリーダーがチーム再編を経て
遂に手にした日本一とその苦悩

――その後、『VALORANT Challengers Japan 2023 Split 1』では見事優勝を果たしました。心境を教えてください。
初めての優勝で本当に嬉しかったです。「VALORANT人生」で一番嬉しかったと言っても過言ではありません。本当に幸せな瞬間でした。
その後も少しエピソードがあって、メンバーと焼肉屋に行ったら、店員さんが『VALORANT Challengers Japan』の試合を見ていた方で、そこで少し話ができたんです。店員さんが僕たちのことを知ってくれていて、面白かったです。

――さすが『VALORANT Challengers Japan』ですね。その後、『Split 2』ではSCARZに敗れ、惜しくも3位という結果に終わりました。
『Split 1』で優勝しても、『Split 2』で負けてしまったら終わりなので、かなりダメージを受けました。『Split 1』で優勝したからこそ、『Split 2』で負けてしまった時の悔しさや色々な思いが、通常よりも大きく込み上げてきました。

――続く『VALORANT Challengers Japan 2024 Split 1』では、国内王者へ返り咲きとなりました。その時のエピソードを振り返っていただけると嬉しいです。
『Split 1』は、新しいメンバーで臨みましたが、優勝することができました。また、IGLをやりながらの優勝は、自分にとって大きな経験になったと感じています。素直に嬉しかったのですが、『VALORANT Challengers Japan 2023 Split 1』で優勝し、『VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2』で敗退した経験があったので、手放しで喜べなかった部分もありました。嬉しかった気持ちと同時に、様々なことを考えていましたね。

――優勝までの道のりで、特に印象に残った試合を教えてください。
『Playoff Lower Bracket Final』のSengoku Gaming(現QT DIG∞)戦です。スプリットで逆転勝利を収めた試合で、自分自身が成長できた試合だと感じています。読みが冴えていて、頭をずっと動かす感覚を身に付けることができました。

――続く『Split 2』も振り返りをお願いします。
『Split 2』も、序盤は厳しい展開が続いていて苦しかったんですけど、チームメンバーの力もあり、諦めずにやることでオフラインまで進むことができました。決勝では、当時最強と言われていたRIDDLE ORDERと対戦し、2マップを先取したのですが、3マップ目を取られ、そのまま逆転負けしてしまいました。自分としては、放心状態になるほどの負け方で、非常に印象深く記憶に残っています。

信頼する仲間と共に
新たな環境でIGLを務める

――2025年シーズンに向けて、喜びと悔しさを共に味わったメンバーとともにZETA DIVISIONに加入することが決まりましたね。
ZETA DIVISIONというチームに対しては、憧れと尊敬の念を抱いていました。なにより、FENNELで共に戦ったSyouTa、Xdll、そしてJohntaコーチと一緒に移籍できることも、非常に嬉しかったです。Tier 1の舞台で頑張ろうという気持ちでいっぱいでした。

――まさに同じ仲間と、『VCT Pacific』という新たな舞台に挑戦することになったのですね。加入前、『VCT Pacific』に対してどのようなイメージを持っていましたか?
加入前のイメージとしては、普段のスクリムなどを通して、決して戦えない相手ではないと感じていて、十分に勝てる相手だと考えていました。しかし、いざリーグが始まってみると、そう簡単にはいかず、現在苦戦している状況です。

――CLZ選手は現在ZETA DIVISIONでIGLをされていますが、以前所属されていたFENNELでのIGLとの違いは何でしょうか。
2025年シーズンの『VCT Pacific Kickoff』までは、Johntaコーチがいたため、FENNELでのやり方をベースにしていました。現在は、XQQコーチやCarlaoコーチの教えをできるだけ反映できるように教えてもらっています。以前は自分主体のIGLでしたが、今は戦略の組み立てを、全てではありませんが、コーチに任せている部分がありますね。

――かなり大きく変わったところもあるのですね。新たなスタイルでのIGLで苦労されている点はありますか?
自分の考えをどれだけ出すか、あるいはチームにどれだけ合わせるかという点は、常に難しいと感じています。自分の中では「これが勝利に繋がる良いプレイだ」と思っても、チームの方針とずれていると、そこをすり合わせる必要が出てきます。これまでとは異なるスタイルでIGLを務めているので、難しいと感じる瞬間はあります。

CLZ選手が語る
ZETA DIVISIONのチームメイト

――ZETA DIVISIONのチームメンバーについてそれぞれ教えてください。
Depさんは、席がずっと隣同士ということもあり、スクリム中に顔を合わせて笑い合う場面がよくあります。お兄ちゃんじゃないですけど、とても話しやすいです。シュガーさんは、メンバーの中で一番真面目な印象です。ゲーム面で「こういうのはどう思う?」と意見を聞きたい時に、一番頼りになる存在です。Xdllは、FENNEL時代から変わらず、ずっと騒がしいですね(笑)。でも良い所もたくさんあります。ZETA DIVISIONに移籍してから、プロ意識がより高くなったように感じます。練習に対してもすごく真面目に取り組む場面が増えて、良い選手になったと思います。TenTenは、日本語がカタコトでかわいくて、席が隣でいつも元気だから楽しいです。

――CLZ選手といえば、クラッチキングというイメージがありますが、大勢の敵を相手にクラッチを成功させる秘訣はありますか?
1 vs 多数の状況になった時は、自分のこと以外何も考える必要がないので、相手がどのように動くかを予測し、それに対する戦略を組み立てて、エイムを集中させるだけという感じでやっています。だからクラッチを成功させやすいのかなと。

――CLZ選手のようにクラッチできるようになるにはどうしたら良いでしょうか。
とにかく予測ができるようにならないといけないですね。クラッチシーンでは「こうしてくるだろうな」という予測がないまま、色々な所を見なければいけないんです。なので「この銃声を出したらここで相手がピークしてくるだろう」という駆け引きを常にできる状態が、クラッチが成功するタイミングだと思います。数をこなすしかないとは思いますが、予測ができないとたまたま目の前に来た敵を倒すだけになってしまうので(クラッチは)出来ないと思います。

拠点を韓国へ
新たな挑戦は続く

――ありがとうございます。現在の韓国での練習環境や生活はいかがですか?
韓国では、近くに公園があって気軽に外で運動できるのが良いですね。それ以外だと、飲食店が近いこととか…。なんだか、立地の話になってしまいました(笑)。共同生活という点については、オンラインでの活動と比較してすぐに言いたいことが言えたり、メンバーと顔を合わせると、人となりがすごく分かったりするのでオフライン環境っていいなと思います。あと、韓国ではスタッフの方々に「お願い!バスケしに行こ!」とお願いして公園でバスケットボールをするのが、唯一の息抜きですかね…。

――毎日生活を共にしながら戦うのは、新たな経験ですよね。2025年シーズンの抱負についてお聞かせください。
2025年シーズンを通して、ZETA DIVISIONとして一歩ずつ着実に強くなって、勝ち切れるチームになりたいと思っています。

――最後に、韓国での観戦を迷っているファンの方に一言お願いします。
海外ということで、少しハードルが高いと思う方もいるかもしれませんが、韓国は意外と近いので、ぜひ『VCT』などの大会を応援しに来てください!

【プロフィール】

CLZ
ZETA DIVISION 『VALORANT』部門所属。日本人で最初にランクレーティング1,000を達成し、強烈なフィジカルを持ちながらIGLをこなす。塩分が好きで、焼き鳥とラーメンは塩派。

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