eスポーツ業界で働く方々のリアルな言葉『株式会社RATEL 吉本砂月』
日々仮説を立て挑戦の繰り返し、eスポーツ業界の市場規模拡大を目指す。

本記事では、将来eスポーツ業界を目指す学生や転職活動中の方に向けて、株式会社RATEL（以下、『RATEL』とする）に協力してもらい、どんな仕事内容なのか、どんな方がeスポーツ業界に向いているのかをRATELの取締役を務めている吉本さんに話を聞いた。

――本日はよろしくお願いします。初めに吉本さんが現在所属している部署とポジション、今まで携わったイベントについて教えてください。

よろしくお願いします。共同創業者としてRATELを立ち上げて、現在は取締役を務めています。そのため、RATELとして制作している大会には全て関わらせてもらっています。
携わったものの中で、特に印象深いものでいうとRATELで０から作り上げた『Call of Duty: Mobile』や『Apex Legends』などの大会を開催している大会コミュニティの『GOOD GAME LOVERS』(以下、『GGL』とする)ですね。あとは、FENNELさんが主催する『FENNEL FRIDAY LEAGUE』(以下、『FFL』とする)にマネジメントやディレクションではなく、配信技術やデザインといった制作に近い部分で関わらせていただきました。

――『FFL』と『GGL』には具体的にどういった部分で携わっていましたか？

『GGL』に関しては、立ち上げの部分や盛り上げるためにはどうしたら良いかなどの部分を行っていました。コロナが明けてからコミュニティベースの大会で盛り上がっているものが少なかったので、元々コミュニティに入っていた方たち向けに大会を開催する団体を新しく作り上げたいという思いで携わっていました。また、『FFL』に関しては、『荒野行動』をはじめとして『Apex Legends』『フォートナイト』『モンスト』へ展開し、そこから『Apex Legends』に絞って『Apex Legends Global Series』のオフシーズンの大会といえば『FFL』と呼ばれる大会にまでFENNELさんと共に大きくする事ができました。

――ありがとうございます。次に吉本さんのゲームとの出会いについてお聞きしていきたいと思います。初めてプレイしたゲームはなんですか？

初めてプレイしたゲームは幼い頃に家にあったPlayStationの『エースコンバット3』でした。eスポーツで扱われる種類のゲームでいうと、中学生の頃にプレイしたスマホゲームの『World of Tanks Blitz』ですかね。ただプレイするだけではなく、『World of Tanks Blitz』のクランを作ってクランリーダーをやりながらオンライン大会に出場していました。

――幼いころから大会に出場するほどゲームが好きだったんですね。RATELに入社する前もゲームに関わるお仕事をしていたんですか？

RATELに入社する前は、デザイン系の学校に通いながらフリーランスのグラフィックデザイナーをしていました。どうにかしてひとりで生きていきたいという思いもあって、基本的には自分がお客さんとお話して仕事が完結するようなスタイルでeスポーツのチームやクランのロゴなどのデザインを制作していました。デザイナーを1年半程行っていて、X(旧Twitter)とクラウドソーシングのサービスなど全てを合わせると約4,000件納品していたと思います。

――4,000件・・・！すごいですね。フリーランス時代にeスポーツに関わるお仕事をされていて、その流れでRATELを創業されることになるのでしょうか？

そうですね。2017年頃にRATELの前代表の吉村と出会って意気投合し、eスポーツを軸とした会社を立ち上げたいという思いを聞いて、それなら事業内容を決めてやってみようと思いRATELを創業しました。

※吉村さん：RATELの共同創業者で現在はRATELを退任。

――現在はどのようなお仕事をされていますか？

メインの事業としてはeスポーツの大会制作とeスポーツに関連する広告案件やインフルエンサーマーケティングの代理店業務の2つをやっていて、それらをより良いeスポーツコンテンツにするための人材やお金、ものが常に必要なだけある状態を作るのが自分の役割になります。具体的には、人材採用やお金の調達と出入りの管理、必要機材の選定などを行っています。
また、エンタメコンテンツを作るための企画力が自社にあるか、自社になかった場合その企画を作れるコミュニティにお手伝いいただけるような関係を育むなど、RATELがより良いeスポーツコンテンツが作れるように環境作りをしています。

――吉本さんがお仕事で目指している目標はなんですか？

日本のeスポーツ市場規模を1兆円以上にすることを目標としています。マラソンのようにひたすらに淡々と仕事をこなして毎日が途中経過って感じです。1兆円以上にするための仮説が違うときもたくさんあるので、そういった時はちゃんと軌道修正をして一番早いルートを選べるようにしています。イメージでいうとゲームの攻略に近いですね。寝る前もお風呂入ってる時も「あれをこうしたらこうなるかな」「あの仮説も試さないとな」といったゲームを攻略している時の感覚に仕事のスタイルは近いと思います。

――お仕事をされる上で何か意識していることはありますか？

自分が意識していることは「体力」を増やすことですね。去年はゲームと仕事をしている時間以外は山に登ったり、海に行ったりと外出をして体力をつける活動をしていました。最近は自転車にずっと乗っていて、通勤も自転車でしています。雨の日は家に帰ったあとに室内でローラー（自転車の練習器具）に乗りながら残りの仕事をやることもありますね。

――RATELの取締役を務める吉本さんが思うRATELに来て欲しい人物とはどんな方ですか？

少し長くなりますが、自分が7年間この業界で働いてきて思ったことは、eスポーツ業界というのはいろんな人が目指しやすいのに入りにくくて続かない業界であることですね。RATELには月120人程応募してもらえているんですが、その中から1人採用するかどうかという倍率です。その1人を採用しても3年続いたら長い方だと思っています。この業界に向いている方は、コミュニティ運営、企業、大会運営などをこの業界に目指す前から行っている人ですね。理想でいうと、eスポーツ業界に限らずに一度起業したり、事業を立ち上げたり、コンテンツを立ち上げたりして誰かに譲渡や売却をしてひとつの区切りをつけたことがある人はこの業界に向いていると思うし、業界に入った時に面白く仕事ができると思います。好きなゲームタイトルの大会をやりたいという思いでこの業界を目指す人よりも、eスポーツ業界で自分が作りたい世界観や状況、事業、プロダクトがハッキリしていて、やりきるのに1年かかる事業をたくさんできる人の方がこの業界で長く働いていけると思います。実際RATELのメンバーにも『PUBG』のプロチームを作って売却した人やメディアを立ち上げて売却した人、自営業でコンテンツを作って売却した人がいます。就職までに猶予があって、eスポーツ業界に入ろうかなと考えている人は、まず自分でeスポーツコミュニティや大会の制作をまずやってみてからeスポーツ業界に入ってみるかを判断した方がいいと思います。作り手側を経験することは必須だと思っているので。

――最後に学生の方や転職活動をしている方に向けてメッセージをお願いします。

まずは起業をしてみて欲しいですね。あと、どんな業種からだとしてもeスポーツ業界に転職する時には、既存のeスポーツ制作会社に入社する前に、主催としてゲームの大会を開催したり、何かしらのゲームの人数がいる団体やチーム、コミュニティ、会社を立ち上げたり、ゲームのDiscordサーバーを作成し人を集めるなどのゲームに関わる何かをやってみて欲しいと思っています。とにかく人を集めて盛り上げてゲームを起点に良いものを届けるという事をしてみて欲しいです。

――ありがとうございました。

RATEL 吉本砂月 Profile

2018年に出身地でもある福岡でRATELを創業。趣味は自転車に乗ること。釣りや登山、野鳥観察を楽しんでいた時も。最近プレイしているゲームは『Escape from Tarkov』と『PARAVOX』。

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