冷静と情熱の間に置かれたプロ魂
日本を、アジアを、越えて世界へ

ドラフト1位だからといって、
必ずしも成功するとは限らない。
期待された若人が期待通りに活躍するのは、
思っている以上に尊いことだ。
それだけに大空に向かって羽ばたいたときの感動は、
何にも代えがたい。
そんな夢を見せてくれる若者が、この界隈にいる。

Photo EISYAKEN

※本文は2024年12月20日に発行したGAMEZINE Vol.29に掲載されたインタビューです。フリーマガジン「GAMEZINE Vol.29」のダウンロードはこちら

コンシューマからPCへ。マイクラからFPSへ

――初めてプレイしたゲームの思い出から教えてください。どんなゲームをプレイされていましたか?
小学2年生のときに、兄と一緒にニンテンドー3DSをプレイしていました。ソフトは『ポケモン』や『妖怪ウォッチ』で、対戦したりして楽しんでいましたね。

――コンシューマ機から入っていったのですね。PCゲームは何歳くらいからプレイするようになりましたか?
始まりは小学6年生のころの『Minecraft』でしたが、そこからはいろいろなゲームを触るようになりましたね。『バトルフィールド』『Apex Legends』『レインボーシックスシージ』などですね。

――FPSのタイトルもズラリと出てきて、今に通じるものを感じます。
いろいろと遊んでいるうちに『VALORANT』がローンチされたので、「おもしろそう」と思ってプレイしてみたら、気づいたらここまで来ていました。

――自然とプロへの道を歩んでいた…という感じで、ゲーマーとしてのひとつの理想に感じられます。続いては、ZETA DIVISIONのVALORANT ACADEMY(以下、『アカデミー』)から始まった選手活動について聞かせてください。
そもそもはVorzさんから「アカデミーのトライアウトを受けてみないか」とXにダイレクトメッセージが届いたことがきっかけです。もちろん「お願いします」と返事をして、実際に受けてみたら合格と。あの頃はまだVorzさんとは面識がなかったので、ダイレクトメッセージが届いたときは本当におどろきました。「俺!?」という感じで。ただ、トライアウトはチームに必要と思われる選手しか受けられないものだと思うので、「実力が認めてもらえた」といううれしさもありました。

――ひとつ壁を超えたという感覚ですね。実際に受けたトライアウトで、なにか思うことはありましたか?
正直、微妙というかあまり手応えがなくて…、トライアウトの直後は「受かる」という感覚はなかったですね。後日、合格という連絡をいただいたのですが、気になったのでその理由を聞いてみたんです。すると「将来性に期待している」と言っていただけたので、モヤモヤが一気に吹き飛びました。うれしさが爆発しましたね。

選抜試験の先で出会った終生の戦友

――これからを担う若い選手にとって、「将来性」は最高の合格理由かもしれないですね。そのアカデミーでは、現在の所属チームであるRIDDLE ORDERにもつながっていく仲間と出会うわけですが、それぞれの選手の最初の印象などはいかがでしたか?
yatsukaはぼくよりも先に加入していて、もともと知っている選手だったのですが、後から加入したAaceのことは知らなかったんです。あの頃、彼はまだSNSをやっていなかったので、なにも情報がなかったんです。

――Aace選手に関しては、ゼロからの関係性の構築だったわけですね。ただ、その後の活躍を見ると、アカデミーでの出会いに運命のようなものを感じます。
結果が出たから言えることかもしれないのですが、それぞれがそれぞれのことを理解していますね。接し方もわかってくれているというか、同期のチームメイトという枠を越えて、今は家族に近いものを感じています。

――アカデミーには約1年半所属されていましたが、そこではどのような活動をされていたのですか?
海外のチームを相手にスクリムをして、終わったらみんなでスクリムの動画を見ながらの反省会ですね。この繰り返しが、土台作りとしてすごく大きかったと感じています。Vorzさんのコーチングが的確で、自分たちの持っている力を100%発揮できているように感じられたので、ものすごく楽しかったですね。

――ちなみにその頃のZETA DIVISIONのVALORANT部門には、一緒に撮影されたcrow選手も所属されていましたが、やり取りされることはありましたか?
VALORANT部門とアカデミーは別々に活動していたので、あまり接する機会はなかったんです。そういう状況もあって雲の上の人、憧れの選手という感じでしたね。


黒から黄色へ。気持ちもユニフォームも一新

――アカデミーではVorzコーチの指導の元、改めて選手としての腕を磨いていたCaedye選手ですが、そんな中でRIDDLEへの移籍という話が持ち上がります。このときの思いを聞かせてください。
RIDDLEというチームは知っていたので、そこからお話をいただけたということが、またうれしかったですね。yatsuka、Aace、Vorzさんも一緒にということだったので、不安もありませんでした。アカデミーと違うところは給料が出るようになったことですね。本当の意味でプロになったという気がしました。

――そして「韓国最強のジェット使い」と名高いSeoldam選手を加えたRIDDLE ORDERとして大会、『VALORANT Challengers Japan(以下、『VCJ』) 2024 Split 1』に出場しました。Open QualifierのGrand FinalでMURASH GAMINGに敗れて敗退となりましたが、そのときの思いを聞かせてください。
まず、「あのSeoldamが加入する」ということは大きな衝撃でしたね。世界的なプレイヤーですし、心強いなんてもんじゃないなと。それもあって勝ちたい気持ちが強かったのですが、自分も含めて個人プレイに走るところがあり、良い結果を出すことができませんでした。また、大会前のスクリムではほぼ負けなしだったので、自分でも知らないうちにまわりからの期待というかプレッシャーを受けていたのかという感じです。思ったようなパフォーマンスが出せなかったのは緊張の影響かなと。

――見えない敵との戦いもあったわけですね。そして、その4ヶ月後に悔しさを晴らす機会、『VCJ 2024 Split 2』が訪れるわけですが、オフの間はどのような取り組みをしていたのですか?
『Split 1』の動画を振り返りながら、改めて『VALORANT』の知識を深め、他チームの選手の動きをチェックしていました。もう負けたくないという一心でしたね。

――またその間に韓国のトッププレイヤーであるJoxJo選手も加入されました。どのような経緯でチームに加わることになったのでしょうか?
彼にインゲームリーダーを任せてトライアウトをしたところ、あまりのプレイしやすさに「やばい! JoxJo選手が入ったら絶対『Split 2』に勝てる!」とチームメイト全員が思ったことで、ぜひという流れになりました。まさに入ってくれてよかったという感じですね。

重圧を越えた境地でつかんだ金メダル

――最後のピースが揃ったという印象です。このトピックで『VCJ 2024 Split 2』でも優勝候補の一角になったわけですが、改めてプレッシャーなどは感じましたか?
まわりの期待はもちろん感じていましたが、それがプレッシャーになることはなかったですね。JoxJo選手の加入も大きかったですが、プレイの振り返りや練習に関してもやるべきことをやったという感覚だったので。

――研ぎ澄まされていたわけですね。その言葉の通り、『Advance Stage』グループAの4試合をすべて2-0で勝ち上がり、メインステージも6-1で突破。FENNELとのファイナルこそ、0-2とリードされるギリギリの展開から逆転優勝とさまざまなドラマを作り出しました。改めて振り返って、どのような大会でしたか?
ファイナルは数字的には崖っぷちまで追い込まれていますが、「ちゃんと力を出せれば勝てる」という感覚はありました。実際、3・4ラウンドを取っていくうちにこちらもどんどん勢いに乗ってきたので行けるなと。

――飲み込まれるかと思いきや、逆に飲み込んでいくかのような戦いぶりが目を引きました。会場のボルテージもラウンドを追うごとに高まっていきましたね。
流れや波に乗るのは大事なことですが、ぼくはイニシエーターという役割上、冷静さを保たないといけないのでバランスを取ることを意識していました。スクリムでもチーム全体が熱くなって「まずいな」と思う経験をしてきたので、その感覚を大事にしていました。


アジアでの経験を世界の足がかりに

――バランサーとしてのCaedye選手の働きもあり、『VCJ 2024 Split 2』で見事優勝。次なる舞台はインドネシア・ジャカルタで行われた『VCT Ascension Pacific 2024』でした。
アカデミー時代に海外のチームとスクリムを繰り返していたので、特別意識することはなかったです。自分的にはむしろ日本のチームよりもやりやすいという思いもあります。知っている選手と戦うと、「ヘタを打ったら恥ずかしい」など余計なことを考えてしまうので。ただ、自分たちの実力を出し切るのが一番と思ってプレイした中で、勝てる試合を落としたりしたので、しっかりと反省点を洗い出して次に生かしたいと思います。

――沈着冷静なCaedye選手でも、プレイ中にそのような雑念が入り込むことがあるのですね。ほかでは生活面、とりわけ食事についてはいかがでしたか?
スパイスが得意ではないので、日本にもあるチェーン店で済ませました。スタッフの人たちは冒険して現地のメニューを選んでいましたけど、ぼくはお腹を壊したりしたらシャレにならないというのもあるので…。ただ、元々は東京で開催されるはずだった大会が海外で開催されることになって、いろいろな面での経験を得ることができました。今後も大会のために海外に出向くことがあるはずなので、この経験をムダにしたくないですね。

――「世界と戦うための第一歩を踏み出した」といったところですね。改めて、Caedye選手やチームの今後の目標について聞かせてください。
今はRIDDLE ORDERというチームで、「インターナショナルリーグに行きたい」という気持ちが大きいです。そのためには日頃からの努力、個人能力の向上だけでなく、メンバー全員でチーム力を高めていきたいですね。ほかのメンバーも同じことを考えていると思います。

――力強い決意表明、ありがとうございました。『VCJ 2024 Split 2』の表彰式で見せた男泣き、さらに大きな舞台で見られる日が来ることを楽しみにしております。

【プロフィール】

Caedye
RIDDLE ORDER VALORANT部門所属。2007年生まれ。3HOUSEの音楽、散歩でリラックスし、オンとオフを切り替えながら仕事であるVALORANTと対峙している。

【関連リンク】
X
https://x.com/CaedyeuS

Twitch
https://www.twitch.tv/Caedye_fps

YouTube
https://www.youtube.com/@Caedyefps