日本が誇る才能たちの共演
それぞれのゴールへと日々前進

Photo Utthi、sakyo

※本文は2024年8月26日に発行したGAMEZINE Vol.28に掲載されたインタビューです。フリーマガジン「GAMEZINE Vol.28」のダウンロードはこちら

――まずはそれぞれの『大乱闘スマッシュブラザーズ』をプレイするようになったきっかけを教えてください。

Gackt 兄とNINTENDO64の『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』(以下、『スマブラ64』をプレイしてからハマりまして、そこから『大乱闘スマッシュブラザーズX』(以下、『スマブラX』)、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』(以下、『スマブラfor』)、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下、『スマブラSP』)と続けてきました。中学生まではオンラインが中心だったのですが、高校に進学してからオフラインの大会にも出場するようになりました。
Tea ぼくは兄の口車に乗せられて、誕生日にニンテンドーゲームキューブの『大乱闘スマッシュブラザーズDX』(以下、『スマブラDX』)を購入することになったのですが、プレイしてみたらとても面白くて。ただ、Wii Uは持っていなかったので友人の家でプレイしたりしながら、『スマブラfor』、『スマブラSP』へと流れていきました。
あcola 小学2年生のときにニンテンドー3DSにおもしろいゲームがあると友人に教えてもらってプレイしたのですが、そのときは半年も経たないうちに飽きて別のゲームに移っていました。小学6年生のときに『スマブラSP』が発売されたので、またやってみようかなと思って買って、中学2年生のときにコロナ禍で自宅にいる時間が長くなったので、親にオンラインにつなげてもらって、徐々に力を入れていくようになりました。

――大会などに進出していったということで、当時から腕前も相当だったと思うのですが、自分のなかでの上達の秘訣などがありましたら教えてください。

Gackt ぼくの場合は、なにかに優れているから『スマブラ』がうまいというわけではなく、諦めずにやり続けたらここまで来られたという感じですね。ゲームに関わらずいろいろなことを経験していくなかで、「できない」と思って諦めたことも多かったのですが、『スマブラ』だけは諦めたくないと思ってプレイしていました。自己肯定感を高めてくれたのも『スマブラ』だったので、自分というものを確立させてくれたと思っています。
あcola ぼくもGacktさんと同じで、諦めたくない、負けたくないという感覚でやり続けて、気づいたら上手くなっていたという感じですね。自分だけの特別なことをやっているという意識はないですが、立ち回りよりもテクニックを極めたいという思いは強いです。もしかするとその考え方が自分に合っていたのかもしれません。
Tea どうやって上手くなったか…、なかなか説明が難しいですね。ただ、『スマブラX』に空中ダッシュというテクニックがあるのですが、見ただけでどう入力しているかが理解できたときは、不思議な感覚になりました。普通は気になるプレイがあったら、「どんなコマンド入力をしてるんだろう」と調べると思うのですが、そのときばかりは「人とは違うのかな」と思いましたね。

――続いてはメインキャラクターについて、使い始めたきっかけなどを教えてください。

Gackt 『スマブラ64』からネスを使っているのですが、最初に見たときは「なんで普通の子どもがいるんだろう」という印象でしたね。ただ、『MOTHER2』をプレイしたら使わずにはいられなくなりました。一番はキャラクターへの愛情ですが、ダメージのパーセンテージに関わらず相手を撃墜できるというネスの性能が自分の性格に合っていると思ったので、ずっと使い続けています。
Tea 『スマブラDX』でルイージを使っていたので『スマブラX』でもと思っていたのですが、オンラインで勝てなかったので一度サムスにキャラ替えをしました。『スマブラX』時代のサムスはアイテムを3つ持てる特性があったのですが、『スマブラfor』でそれがなくなってしまったので、また別キャラを使おうと思って行き着いたのがパックマンでした。理由は操作が簡単だからですね。カズヤも使っているのですが、こちらは対称的に扱いが難しいと言われていて、「上手いはずのぼくが使えないはずがない」と自分に対して怒りながら練習していたら勝てるようになりました。
あcola ぼくも『スマブラSP』の出始めのころはルイージを使っていたのですが、Teaさんと同じくオンラインでの限界を感じていました。そうこうしていたらオンラインでShuton選手のスティーブにボコボコにされまして、そのときに「自分もこんなふうにスティーブを使えるようになりたい」と思ってすぐに練習を始めました。スティーブはルイージと特性が似ていて、上位互換というイメージだったので思ったよりも早く馴染みました。

――それぞれが「◯◯世界一」と言われる選手のキャラピックの理由は興味深いですね。また自分の強みはどんなところにあると思いますか?

Gackt 腐らずにやり続けられるところ、ですね。ぼくは器用ではないので、ほかの人なら5試合で気づくものでも100試合やらないと気づかない。そのため、学生時代は負けても100試合プレイできなかったから敗因が分からなかったんですよ。それがプロになって、100試合できるようになって、課題を克服できる時間も確保できるようになったならやらない理由はないですよね。
あcola またGacktさんとかぶるのですが、ぼくも反復練習できることが自分のよさだと思っています。負けた試合を分析、反省してとにかく実践。できることを増やすためにできるまでやり続ける。先ほどの質問でもありましたが、ぼくが上手くなるには数をこなすことしか思い浮かびません。もっといいやり方があるかもしれないですが、今は結果が残せているので間違いではないかなと。ただ、完璧を追い求めすぎると気持ちが切れてしまうので、100点でなく80点でよしとすることもあります。この辺りの感覚は説明が難しいのですが。
Tea 強みというのか…という感じですが、とにかく勝ちたいと思いながらやっています。eスポーツは情報線なので、知識のあるなしの差がとても大きい。ですので自分から情報を引き出しに行きますが、自分の手の内はできるだけ隠す。泥臭いと思われることもありますが、やっぱり勝ちに勝るものはないですからね。

――お話を聞いていると「敵は自分のなかにある」という印象も抱くのですが、改めてライバル、気にしているスマブラプレイヤーはいらっしゃいますか?

Gackt これはぼくなりの考えなのですが、ライバルは設定しないようにしています。国内、海外を含めていろいろな選手がいますから、ピンポイントで誰と決めてしまうと、勝てたときに満足して、それが甘えにつながってしまうような気がしまして。できるだけ感情が揺さぶられないようにしたいと思っています。
Tea ぼくは「負けたくない相手」というよりも「超えたい壁」というところで、Shuton選手ですね。お互い地方出身、『スマブラ』しかやることがなかった少年時代、同じ時期の上京、マイナーキャラ使いの全一と似たところが多いので、お互いよき理解者という感じです。またそれぞれのスマブラセンスも認め合っていますが、ぼくとしてはまだ彼の方が上回っていると感じるので、いつか壁の向こう側に行きたいと思っています。
あcola 気になるのは…ミーヤー選手ですね。どちらもオンライン育ちで、大会でもよく対戦しますし、ランキングも近いところにいるので、一番負けたくない相手ですね。

――大会での対戦は、記録にも記憶にも残りますよね。これまでに参加した大会で、記憶に残っている、ターニングポイントになったと思う大会を教えてください。

Gackt 今年2月のGENESIS X(アメリカ)ですね。メキシコのトッププレイヤーであるMK Leo選手と対戦したのですが、過去3回戦って一度も勝てていなかったのですが、そのときに初めて勝つことができて成長を感じました。順位は13位タイでしたが、それ以上の成果を得られたと思っています。
Tea 2019年のFrostbite2019(アメリカ)で初めて海外の招待大会を経験したのですが、いろいろな面で衝撃が大きかったですね。大会の結果はベスト16止まりだったのですが、「ぼくが生きていく世界はここだ」と決意することができました。
あcola ぼくがオフラインの大会に出場していくきっかけになった大会ということで、2022年5月に行われた篝火#7ですね。優勝することができて、さらに招待された海外の大会でも優勝することができたことで、一気に注目してもらえるようになりました。今となっては、人生が変わった瞬間のように思えます。

――皆さんが海外の大会で活躍していることで、日本のレベルもどんどん上がっていますね。『スマブラ』においての今後の目標なども教えてください。

Gackt あcola選手をはじめ、『スマブラ』は若い強豪プレイヤーがどんどん出てくるので、常に刺激を受けています。そういった状況のなかで、ぼくとしては彼らから憧れられる存在、夢を見せられる存在でありたいと思っています。また憧れという意味では、過去にタイムスリップして、中学時代の自分に「10年後のお前はプロゲーマーとしてがんばってるぜ」と言いたいですね。
Tea 大会の部分でも触れましたが、「『スマブラ』でずっと生きていく」を自分のなかに掲げています。先々も楽しんでいくために、動画配信などをがんばっていきたいと思っています。
あcola Sparg0選手(メキシコ)とSonix選手(ドミニカ共和国)に勝っていないので、まずは2人を倒したいですね。まだ具体的にどう攻略していくかは浮かんでいないのですが、選手としての活動を続けていくその先にあると思うので、しっかりと練習して大会に臨んでいきたいと思います。

――最後に、3人でZETA DIVISION 大乱闘スマッシュブラザーズ部門に加入して約2年が経ちます。このチームに入って、どんなメリットを感じていますか?
Gackt 「TOKYO SMASH BOOT CAMP」という海外勢と日本勢の交流対戦会を開催したのですが、チームのサポートがあったからこそ実現できたと感謝しています。ゲームに集中できる環境も作ってくれますし、ありがたい限りです。
あcola ぼくもよかったと思えることしかないですね。いろいろと相談に乗ってくれたり、他部門の人とも話せたりするので。
Tea 他部門の選手も結果を残していますし、「ZETA DIVISION」という看板の大きさを感じて、自分ももっとしっかりしなければと気持ちが引き締まります。

――ありがとうございました。今後も掲げた目標やさらなる高みへと突き進んでください。

【プロフィール】

Gackt
圧倒的な練習量で培った技術を武器に、国内・国外、オンライン・オフラインを問わず好成績を収める世界一のネス使い。動画配信も精力的に行っている。
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Tea
パックマンとカズヤの二刀流で、さまざまな大会で活躍。セオリーにとらわれない柔軟なプレイスタイルから、「天才肌のファンタジスタ」とも呼ばれる。
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あcola
並外れた反応速度と操作精度で各種大会を制し、世界にその名を轟かせる「神童」。第1回日本eスポーツアワードにて、「最優秀格闘ゲームプレイヤー賞」などを受賞。
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