Apex Legendsの公式トーナメント『Apex Legends Global Series(ALGS)』を代表する日本人プロゲーマーの一人がこの、ゆきお選手。彼はTwitchのフォロワー数18万人の人気配信者でもあるエンターテイナーでもあり、その配信では数多くの名言が生まれ、日々視聴者を楽しませている。現在開催中の『ALGS Year 4 Split 1』ではPro Leagueを勝ち抜き、2024年5月にアメリカ・ロサンゼルスで開催されるPlayoffsへの出場を決めている。今回はそんな “エンターテイナーゆきお” に、これまでのあゆみとこれからの道について話を聞いた。

※本文は2024年4月25日に発行したGAME STAR Vol.27に掲載されたインタビューです。フリーマガジン「GAMEZINE Vol.27」のダウンロードはこちら

兄の影響でゲームを始めた幼少期

――まず、ゆきおさんのパーソナリティから聞いていきたいのですが、ゲームに触れたきっかけから教えてください。
小さいころ、兄の影響で何かをするということが多くて、ゲームも同じく兄の影響で始めました。たしか、小学校1年生の頃にゲームボーイアドバンスでポケモンをプレイしたのが最初だったと思います。たしか、エメラルドとかルビー・サファイヤとか。そのあとはWiiで大乱闘スマッシュブラザーズ、モンスターハンター、ドラゴンクエストなど、当時流行っていたゲームをプレイしてきました。

――幼少期はコンシューマゲームをプレイされていたんですね。どのようなきっかけがあってオンラインゲームやFPSゲームを始めたのでしょうか?
初めてのオンラインゲームは中学校に入ってからで、同級生の影響でクラッシュ・オブ・クランを始めました。同級生でクランを作って。その後はクラッシュ・オブ・クランのゲーム内広告を見て、クラッシュ・ロワイヤルを始めました。それがガチってやる初めてのオンラインゲームでした。実力的にはプロを目指せるぐらいだったと思います。ランキングで世界十何位とか。

――では、始めはクラッシュ・ロワイヤルでプロゲーマーを目指したんですか?
クラッシュ・ロワイヤルでゲームのプロゲーマーを目指してみたいとは思ったんですが、モバイルゲームだとタイトルが終わった後に別のゲームへ移行できなくなってしまうじゃないかと感じたんですよね。でも、FPSゲームであればAIM力さえ鍛えられれば他タイトルへ移行するなど、プロとして長く活動できるかな…と思って、プロを目指すためにパソコンを買いました。

FPSゲームを始めて1年でプロに。

――プロゲーマーを意識して、モバイルゲームからPCのFPSゲームに転向したってことですね。FPSゲームですと様々なタイトルがあると思いますが、なぜApex Legendsにしたのでしょうか?
その時に流行っていたからですね。プロゲーマーを目指してFPSゲームを探していた時に「とんでもない人気のゲームが出てきたぞ!」と友達と話題になって、Apex Legendsを始めました。最初ちょっと触ってみたりYouTubeで調べてみてたんですけど、このゲームはうまくなる価値があるなと思えて、ガチでのめり込みました。そこから1、2年は毎日10時間以上プレイしていたと思います。

――プロチームJUPITER VEGAに加入する所からプロのキャリアがスタートしますよね。加入されるまでの経緯を教えてください。
プロチームに入るために実績を作りたいと思っていたのですが、カスタムマッチ自体がインフルエンサーが行う招待制のものしかなかったので、ランクマッチの日本ランキングくらいしか実績になるものはありませんでした。なので、とにかくランクを回し続けて、日本30位以内に入ったタイミングで、JUPITERから声をかけてもらいました。そこでトライアウトを受けて初のプロチームへの所属が決まったんです。

――プロチームに入って最初に参加した大会は何になりますか?
そうですね。まだ旧名称だった公式大会の『ALGS Online』が最初で、オンライン大会が始まるタイミングでした。この当時はまだ日本と韓国が分かれていましたね。メンバーはJIGENさん、Mateさんでした。

――JIGENさんとMateさんの印象を教えてください。
JIGENさんはもうとにかく上手かったです。今もそうですけど、当時でもキーマウNo.1ぐらいフィジカルを持っていたのですごい尊敬してました。Mateさんは本当に人が良かったですね。僕その当時FPSを始めて1年とかで、言ったら何もわかんない状態だったと思うんですけど、精神的に支えてくれてとても助かりました。

――FPSゲームを始めて1年でプロになったんですね。
当時は17歳でとても尖っていましたね。そのタイミングでプロになっちゃったので、高校は進学校に通ってたのですが、通信制の高校に転校しました。そんなこともあって、結果を出さないとと自分を追い込んでしまって自分に余裕がなかったと思います。Mateさんにはその面でもサポートしてもらえたので助かりました。

――当時の大会結果はどうでしたか?
一番最初の大会では決勝まで行けなかったんですけど、チームで活動して3ヵ月くらいたったときには3位とか4位とか結構良い結果を取れてたと思います。1位こそとれなかったけど、日本で上位になっていたので割と良かったと思います。

――その後、JUPITERから脱退し、Crest Gamingへ加入されますよね。
JUPITERからは契約満了という形で脱退したんですけど、ほとんど戦力外通告という形だったと思います。正直FPSを始めて1年で経験も少なかったし、AIMが良くなくて、フィジカル的な部分で戦力外になったんだと思います。脱退後、Crest GamingがApex Legends部門を作るということでメンバー募集していたので、良く一緒にランクをやっていたへしことなおひろ21と一緒に応募して加入しました。そこで日韓1位を取れちゃったんですよね。そのチームも半年くらいで脱退しました。

――その後は123というチームで活動されていましたね。
そうですね。そこからは1tappyさんとSanoTaylorさんと一緒にアマチュアとして123っていうチームを作って活動することにしたんですけど、Apex Legendsを始めてから毎日10時間プレイしていたのもあって、Crest Gamingで日韓1位を取った時に燃え尽き症候群になってしまったんです。そのくらいからストリーマー的な活動に力を入れ始めて、一瞬ストリーマーをやりたくなってしまって、123の活動途中で一度ストリーマー兼コーチになったりもしました。123の1tappyさんとSanoTaylorさんと一緒にプロやるっていう話もあったんですけど、次の『ALGS Pro League』まで1ヵ月もないってときに、直前でプロチームの話がなくなってしまって、一緒にCrest Gamingで活動していたへしことなおひろ21の2人がすぐに誘えたので、456という名前でチームを組むことになりました。
そんなこともあって、責任も増すことからプロチームには入りたくないと思うようになって、しばらくアマチュアチームの456で配信をしながら競技に参加していくコンセプトで活動してました。

――123や456ってかなりユニークな名前だと思うのですが、由来を教えて頂けますか?
FENNEL主催の『FFL』という大会があって、僕と1tappyさんSanoTaylorさんで参加することだけ決めていたのですが、チーム名が決まってないままで、僕のところにDMで今日中にチーム名を決めてくれって連絡がきたので、123って適当に決めました(笑)。456もその次のチームだからって適当につけてます。

――それが今ではブランドになったり、会社になったりしたんですね。
ありがたいですね。

RIDDLEならギリOK?

――456からRIDDLEへ、アマチュアからプロに加入するというのに気持ちの変化はありましたか?
僕はプロチームに入るのに反対だったんですよ。でも、へしことなおひろ21が給与が欲しいってチームを探すことになったんですけど、その時も配信メインの活動と両立できるところを探していて、色々なチームから声をかけてもらったんですけど、最終的にRIDDLEならぎりOKかなってことで加入を決めました。

――どうしてRIDDLEならギリOKだったんですか?
あまりガチガチではないからですかね。オーナーのボドカさんも配信者ですし、それなら456のコンセプトにも合ってると思いました。

――実際にRIDDLEとして活動してみたらどうでしたか?
チーム自体は想像通り良かったですね。とは言っても環境の変化で勝てなくなる瞬間があって、プロチームならではの責任は感じます。1シーズン活動した後になおひろ21がやめちゃったので、あの3人というのがお遊びの延長みたいな感じで配信映えする面白いメンツだったので、配信メインの活動はやめてプロ寄りの活動をしていかないといけないと改めて覚悟しました。

メンバーを変えて臨む「ALGS Year 4」

――直近の『ALGS Year 4』についてお話を聞いていきますが、Year 3からメンバーを変えましたよね。今のメンバーとの出会いを教えてください。
そうですね。前回の世界大会の終わった後、選手が全員宿泊しているホテルがあるのですが、1階のロビーのレストランで次のプロリーグの作戦会議とか、メンバー交渉が始まっていて、気が付いたらほとんどの選手が組む相手を決めていたんですよ。その時、僕やsakuとMeltsteraは蚊帳の外でしたね。たまたまsakuさんと同じ机に座ってて「sakuさん、どうするんですか?」って聞いたら、「やる人いないんですよね。」って返ってきたので「僕たちワンチャンやります?」って軽く誘ったら決まっちゃいました。Meltsteraはその場ではなかったんですが、sakuさんとMeltsteraが「一緒にやろう」って話をしていたみたいで3人で活動することに決めました。

――トライアウトなど、チームで試す期間はなかったのでしょうか?
無かったですね。この2人に関しては十分に実績があるので、トライアウトの必要はなかったです。

――確かに実績は十分ですね。ゆきおさんから見たsakuさんとMeltsteraさんを教えてください。
sakuさんは日韓1位のIGL(In Game Leager略でゲーム内の司令塔のこと)で明るくておちゃめで普段ふざけている感じですけど、大会ではまじめです。年齢的にも競技シーンの中では年長ということもあって、雰囲気作りもやってくれて、頼りがいのある古参プレイヤーです。Meltsteraは若き才能っていう感じです。日本のキーマウプレイヤーの中でトップのフィジカルを持つプレイヤーの一人です。すごいおしゃべりで負けず嫌いな熱い男ですね。

――3人ともキーマウというのが話題になりましたよね。現在だとパッドのメンバーを入れるのが主流になっていると思いますが、チームを組む時に気になったことはありますか?
そうですね。IGLがsakuさんじゃ無かったらありえなかったと思います。あとは面白いかなって(笑)
sakuさんは中入りムーブで1番うまいIGLだと思っています。基本的に50:50のファイトはやらないんです。アンチに入って、有利なファイトでキルポイントを稼いだり、順位を延ばしたり。キーマウプレイヤー3人の方が移動もスムーズになりますよね。

――実際にこの3人で『ALGS YEAR 4 Split 1 Pro League』を戦ってどう感じましたか?
そうですね。思ってた通りというか思ってた以上で、sakuさんはIGL上手いし、Meltsteraのフィジカルが強いのは元々知っていたんですけど、想像以上で。「そんなに強いの!?」っていう。元々世界大会には行けるかなとは思っていましたけど、ボーダーギリギリの戦いをするんだろうなと思ったりしてたんですよ。でも早い段階から決めることができて、結果は順調すぎるくらい良いですね。

――RIDDLEの大会配信は今シーズンも面白いです。
そうですね。やっぱり競技メインでやりながら、やることちゃんとやりつつ、面白くできるところは面白くしたいなっていうのはやっぱりありますね。

――シーズン中はどんな生活をしているのでしょうか?
基本的に日曜日に大会があるので、月曜〜水曜日は夕方に起きて、ご飯食べて、ちょっとアップしたらスクリムを18時から24時までやって、そのあとは海外のスクリム動画を1、2時間みてから、ご飯食べて2、3時間は自由時間で朝方に寝てます。木曜日くらいから徐々に生活リズムを大会の時間に合わせていて、正午起きて、土曜には11時くらいに起きて飯食って、自由な時間にアップして、スクリムして終了して寝てます。

――この後、5月にアメリカ・ロサンゼルスで開催される『ALGS Year 4 Split 1 Playoffs』への意気込みを教えてください。
sakuさん本人も言っていたんですけど、僕たちの中入りムーブは世界大会の方が輝くと思います。僕自身は世界大会に出場するのは3回目で、sakuさん、Meltsteraさん共に世界大会の経験が豊富で、3位と4位と上位だった経験もあるので期待してもらっていいと思います。ファイトファイトって感じではないと思うんですけど、僕たちのファイトって終盤になると思うんですけど、そういうところでしっかり決めきるというプレイができたらと思っています。

――最後に応援してくれているファンへのメッセージをお願いします。
いつも応援ありがとうございます。今後も配信にも力を入れながら競技をやっていくので応援してくれたら嬉しいです。

【プロフィール】

ゆきお

Apex Legends公式トーナメント『ALGS』で活躍するプロゲーミングチームRIDDLE所属のプロゲーマー。Twitchを通じてApexの面白さを発信するなど、Apex Legendsの競技シーンには欠かせない人物。勝負飯はコンビニの塩おにぎりとラムネ。

関連リンク